研究概要 |
還元的に水素を発生するシステムを開発することを主眼とした研究を実施した.すなわち,エネルギー生産システムを構築するべく,太さ100マイクロメートル,高さ40マイクロメートルの半楕円上のマイクロリアクター内に鎖状高分子とパラジウム塩の溶液を層流状態で流入し,引き続き還元することにより,層流界面上にパラジウムナノ粒子導入型高分子触媒膜を世界で初めて構築することに成功した.この高分子パラジウムナノ粒子触媒膜導入型マイクロリアクターを用いて,ギ酸ナトリウム水溶液を還元剤した水素化脱塩素化反応の検討を行った.その結果,50-70℃中滞留時間8秒程度で効率的に反応が進行し,対応する脱塩素化化合物が得られた.この反応系は様々なハロゲン化化合物に適用することが可能であった.さらに塩素化化合物のみならず臭素化化合物,ヨウ素化化合物,さらにはスルポナート化合物の脱官能基化にも適用可能であり,対応する生成物を定量的に与えた.そこで,水素発生を行うべく,ギ酸ナトリウムを水素発生源とし,水中にて,マイクロ流路にギ酸ナトリウム水溶液を導入した.その結果,同様の条件で効率的に水素を発生させることに成功した。このとき,副反応は確認されなかった.ギ酸は蟻の酸というように天然に存在する化合物であり,ギ酸ナトリウムからの直接的水素発生は,危険な水素ガスを必要時に瞬時に調製することが可能であることから,実践的な水素発生機器の開発として有益な結果が示された.
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