研究概要 |
ZrOCl2・8H2Oとリン酸モノエステルROP(O)(OH)2から,層表面にP-OR基を有する層状リン酸ジルコニウム(ZrP)有機誘導体を合成できることが知られている.そこで本研究では,金属イオンや金属錯体への親和性の高さから抽出剤として広く用いられているリン酸トリブチル(TBP)を用い,ZrPの有機誘導体の直接合成を試みた.ZrOCl2・8H2OとTBPをオートクレーブ中で150℃,2日間反応させた.その後遠心分離,アセトンによる洗浄,風乾を経て生成物を得た.生成物のXRDパターンでは,1.62nmに回折線が観測され,これは報告されているα-ZrPの有機誘導体Zr(O3POC4H9)2の層間距離(1.59nm)に類似した値であった.生成物のIRスペクトルにおいては,TBPで観測されるP=O岡の伸縮振動が反応後ほぼ消失した.また,P-O伸縮振動付近のプロファイルはP-OH基による吸収帯が観測されなかった事以外はα-ZrPのスペクトルに類似していた.一方,31P MAS NMRスペクトルにおいては,0ppm[(C4H9O)3P=0],-6ppm[ZrOP(OC4H9)3],-14ppm[(ZrO)2P(OC4H9)2],-21ppm[(ZrO)3POC4H9]にシグナルが観測された.シグナル強度から主なP環境は(ZrO)3POC4H9であり,これはα-ZrPのP環境に対応する.以上の結果から,反応過程中にTBPの有する3つのn-ブトキシ基のうち2つがZrOCl2・8H2O中に含まれる水により加水分解され,n-ブトキシ基を有するα-型構造の誘導体が生成したと推定される.
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