研究概要 |
3年間の研究期間に亘り,ポリ-α-オレフィンの一環としてアイソタクチックポリプロピレンを取り上げ,その電界紡糸を試みた。その結果,高温加熱条件下でイオン液体を添加することで電界ゲル紡糸に成功した。さらに,紡糸糸を高速回転コレクター上に採取し,引き続いて延伸を施すことで高配列・高配向した繊維の作製と,その構造・物性評価を試みた。その結果,単に高速回転コレクター上に採取するだけでは繊維中の微結晶の配向は観察されず,後延伸によりはじめて高度に微結晶が配向することを見出した。また,延伸に伴い結晶化度が飛躍的に上昇し(73%),ナノファイバーでは20倍までの高い延伸倍率が可能となった。さらに,それに伴い弾性率と強度が上昇し,各々,22GPa,710MPaの値を得た。この際,マクロなサイズのフィルムとの構造・物性比較の比較を行うと,フィルムでは延伸倍率は15倍が最大であり,弾性率,強度とも各々,9GPa,560MPaに留まった。これらの値は上述の物性値に及ばず,ナノファイバーの優位を示すことができた。このことは当初予想したように,ナノファイバー化に伴って材料欠陥の減少が寄与しているものと考えられた。 これまで-α-ポリオレフィンのナノファイバー化についていくつかの報文が発表されているが,いずれも単に繊維径としてのナノ化に留まっていた。しかしながら一方,本萌芽研究により,高配列した高強度・高弾性率ポリプロピレン・ナノ繊維の創製に成功したことは同材料を構造材料として利用する可能性を示したことを意味し,成功裡に研究を推移させることができた。今後ナノ繊維を充てん繊維とする複合材料の創製へと展開する予定であり,さらに同手法をポリエチレン・ナノ繊維,次いで超高分子量体へと展開していく計画である。
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