研究概要 |
従来の圧力計測技術の限界を打ち破る革新的な手法として,1)信号処理や画像処理を利用した非定常計測手法と 2)ナノ多孔質膜を用いた感圧分子センサの開発に取り組んだ.今年度は感圧塗料計測の適用範囲を低速・非定常現象に拡大することを目的に,非定常計測手法として信号処理を利用したPhase-lock法および周波数解析を利用した手法の開発と高度化を,また多孔質アルミナを利用した差圧型感圧分子センサ膜の流れ場への適用を行った.合わせて感圧塗料による低速現象計測に対して理論誤差解析を行い,主要な誤差要因の特定および改善を行った.その結果以下に示す成果が得られた. ・角柱側面に周期的に生じる"ゆらぎ"をもった非定常圧力変動を基準現象として,信号処理を利用したPhase-lock法および周波数解析を利用した手法の開発と高度化を行った.その結果,これらの技術により角柱側面でピーク周波数150Hzで変動する圧力分布を振幅0.1~0.3kPaで正弦振動する圧力変動を捉えられることがわかった.加えて,低速現象計測に最適な感圧塗料の選定および信号・画像処理手法の改良を行うことで両手法の圧力計測精度や空間・位相分解能を大きく改善させ,より微小かつ高速な非定常現象への適用可能性を示した. ・流れ場中における多孔質アルミナを用いた差圧応答型PSPの特性を調べた.開発した差圧応答型PSPは,流れ場中において従来のPSPの数倍程度の圧力感度を持つことがわかった.ただし,PSPの発光は圧力に加え流速にも依存し,圧力を正確に測定するためには2つのパラメータを分離する機構やデータ処理手法を開発する必要があることがわかった.
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