研究概要 |
本研究の目的は,静電誘導アクチュエータの原理に基づき,紙やフィルムなどのシート部材を自在に搬送するデバイスを実現することである. 昨年度,3相電極構造における1自由度の静電誘導駆動に関して,駆動力と移動体抵抗値との関係などを明らかとし,駆動特性のモデル化,および,それに基づく最適化を行った.本年度は,引き続き駆動特性の検証を行ったことに加え,電極製作方法の検討と平面3自由度駆動の実現を試みた. 電極製作手法としてはスクリーン印刷を用いた手法を検討した.本研究では,将来的に,オフィスデスク等の上を覆い尽くす大面積のアクチュエータを実現し,それによりデスク上で様々な紙のハンドリングを実現することをめざしている.そうした大面積のアクチュエータを製作する場合,大面積電極を安価に効率良く製作する手法が不可欠である.そこで,スクリーン印刷を用いて半透明なプラスチックシートに3相構造の電極を印刷することで静電アクチュエータを製作する技術を検討した.結果,装置の制約によりA4サイズより小さい程度の面積までしか実現できていないものの,紙の静電誘導搬送が可能な印刷電極を製作することに成功した. また,上記の印刷により製作した電極を市松模様に並べることで,3自由度での紙搬送を実現した.試作したシステムでは,4個の1自由度電極を市松模様に並べ,それぞれに印加する電圧を制御することで,上下左右といった平面2自由度の並進運動に加え,回転運動も可能であることを確認した.将来的には,より多くの電極を並べることで,平面内で様々な運動を実現させることが可能になると期待できる.
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