研究概要 |
本研究では,Dy添加量を抑制しつつNd-Fe-Bの保磁力を増加させ,従来の(Nd,Dy)-Fe-B合金磁石に比べて,低Dy含有量で優れた耐熱性を有する磁石の開発を目指している。平成20年度の研究では,まず,Nd-Fe-B/(Nd,Dy)-Fe-Bコンポジット磁石を仮定して,マイクロマグネティクス理論に基づく計算機シミュレーションを実施,等方性磁石においては,Nd-Fe-B結晶粒と(Nd,Dy)-Fe-B結晶粒の間でDyの拡散を起こすことにより,コンポジット化による特性改善が期待できることを見出した。次に,非晶質Nd-Fe-B急冷粉末及び(Nd,Dy)-Fe-B急冷フレークを作製し,混合・圧縮成形の後,熱処理によりDyの拡散を促した結果,コンポジット磁石において同Dy量含有の合金磁石の特性を上回る高磁気特性を得ることができた。 平成21年度前半の研究において,熱処理の条件について詳細な検討を行ったところ,Dyの拡散は非晶質-結晶質転移の過程において非常に有効に行われていることが明確になった。そこで,Dy量の一層の低減を図る目的で,非晶質Nd-Fe-Bフレーク表面にPLD法でDyコーティングを施し,熱処理により結晶化と粒界を介したDyの拡散を同時に起こし,保磁力を増加させる手法を採用した。この方法で,Nd-Fe-Bフレークの残留磁化の減少を抑制しつつ,その保磁力を1.5MA/m以上まで増加させることができた。結晶化後にDyを拡散させた実験においては,前記の特性達成することができず,結晶化とフレーク表面からのDy拡散を同時に行うことにより,Dy量を抑制しつつ保磁力を増加させる手法の優位性を確認することができた。
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