研究概要 |
近年のコンクリート高強度化技術の進歩はめざましく,設計基準強度100MPaを超えるような超高強度コンクリート構造物の施工実績が増えているが,この高強度化にはセメント分散剤である高性能減水剤とフライアシュと同じ人工ポゾラン材である超微粒子のシリカフューム(SF)が必要不可欠である。一般に超高強度コンクリートの水セメント比は極めて低く,SFのポゾラン反応によりケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)が生成され微細空隙を充填するが,各セメント鉱物の水和反応に及ぼすSFの影響や,SFのポゾラン反応におけるC-S-Hの詳細な生成機構については分かっていない。そこで本年度は,SFがセメント水和反応の反応に及ぼす影響さらに生成するC-S-Hのケイ酸アニオン構造(オリゴマーサイズのシロキサン鎖の鎖長)に及ぼす水結合材比の影響について検討を行った。本研究ではセメントは低熱ボルトランドセメントを使用し,SFの添加率はセメントの内割10,20%置換,砂結合材比1.0水結合材比(W/B)は15,22,30%として実験検討を行った。実験結果より以下のことが明らかとなった。セメント鉱物であるエーライト(C_3S)の水和反応率は,SFの置換率に拘わらず材齢7日でW/Bが15%で約60%,20%で約70%,30%で約80%に達しそれ以降の水和は停滞した。一方,ビーライト(C_2S)の水和反応率はSF添加率が10%から20%へ増加すると反応が若干抑制され,W/Bが15~30%の範囲では反応率に大きな差異は認められなかった。一例としてW/Bが22%,SF添加率が10%の場合,材齢7日で約10~15%,材齢28日で約20~30%,91日で約35~40%となった。生成されるC-S-H量は,SF添加率の増加により若干増加が認められ,W/Bの低下により減少した。C-S-Hのケイ酸アニオンの鎖長は、W/Bの増加により増加しSFの増加により抑制された。
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