研究概要 |
フェムト秒レーザーパルスの集光照射によるマイクロ加工法は,ガラス等の透明材料内部を空間選択的に改質できる優れた手法であり,3次元微細光学素子等への応用が期待されている.昨年度はガラス金属間マイクロ接合における接合界面観察を行い,界面近傍のガラス内に金属ナノ粒子が作製されることを見出した.さらに,金属薄膜をガラスで挟み,その領域にレーザーパルスを集光照射することで,金属ナノ粒子が含まれた透明領域をガラス内部に形成することに成功した.本年度は,この金属ナノ粒子生成部を詳細に解析するため,透過型電子顕微鏡による試料観察を進めた.特に,BK7ガラス内部に銅および金のナノ粒子を生成できること,また電子線回折像から,ナノ粒子は酸化していないことを確認した.また,当初は計画していなかった研究として,マイクロ加工法の更なるプロセス解明と加工特性向上を目指し,ラマン散乱による加工部の温度解析や加工部周辺の内部応力解析を進めた.その結果,フェムト秒レーザーパルス照射直後の温度上昇(700K~2000K)及び100nsオーダーでの急冷過程,加工部周辺の数百MPaに及ぶ大きな内部応力を明確に観測した.このようなプロセス解明は,ナノ粒子生成機構を解明する上で重要と考えている.また,内部応力を低減する書き込み手法を開発し,ガラス○マイクロ接合に応用することで接合特性の大幅な改善に成功した.以上を通じて,本研究ではフェムト秒レーザーを用いたガラス内部加工におけるナノ粒子生成という新規手法を開発するとともに,加工特性向上につながる有益な知見を得た.
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