研究概要 |
エチレン共存下でのメタンの炭化水素への転化反応は,銀イオン以外の金属イオンで修飾したH-ZSM-5ゼオライトでも進行することを確かめる為に,同位体である^<13>CH_4を用いてエチレン共存下でのメタンの転化反応を行なった。生成した炭化水素は, Fe/HZSM-5及びMo/H-ZSM-5ではプロピレンとエタンである。一方, In/H-ZSM-5ではこれらの炭化水素の他にベンゼンとトルエンが観測された。いずれの場合も生成したプロピレンには^<13>C^<12>C_2H_6が必ず観測される。その割合が金属イオンの種類に依存することから,メタンの活性には金属イオンが関与することが分かった。 In/H-ZSM-5では,プロピレンの他にベンゼン(C_6H_6)とトルエン(C_7H_8)が生成する。ここで^<13>Cはトルエンだけに観測され, ^<13>Cを含むトルエンには,それが一つだけを含む^<13>C^<12>C_6H_8が観測される。即ち,トルエンの生成物は^<13>C^<12>C_6H_8と^<12>C_7H_8であり,このうち^<13>C^<12>C_6H_8の割合は48%であった。ここで^<13>Cを二つ以上含むトルエンは観測されなかった。生成したトルエンのフラグメンテーションから判断すると, ^<13>Cはトルエンのメチル基に主に存在しているものと思われる。一方,ベンゼンには^<13>CH_4由来の^<13>Cが含まれてこない。従って,ベンゼンの生成にはメタンが関与せず,エチレンだけが関与する。トルエンは主にメタンとベンゼンとの反応によって生成すると思われる。 さらに,トルエンのメチル基の炭素を^<13>Cでラベルしたものを用いて, ^<13>Cがベンゼン環に移動するかを調べた。メタン転化反応が進行するAg, In, Mo, Znなどの金属イオンで交換したZSM-5ゼオライトに^<13>Cでラベルしたトルエンを接触させた。反応後,トルエン化合物を分離し, ^<13>C,および^1HNMRで同定した。しかし, ^<13>Cがベンゼン環に移動する現象は,観測されなかった。
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