研究概要 |
本研究では、シンクロトロン高輝度X線ビームライン(SPring8, BL45XU)を用い、波長0.9Aカメラ長1〜3mの条件で、精製ウニ精子ベン毛軸糸、および、ブタ脳精製微小管のX線小角繊維回折の観察を、JASRIの岩本裕行博士の協力により実施した。繊維回折法は、目的の繊維を一方向へ配向させる技術がもっとも重要な課題である。生理的な条件下、短時間に軸糸や微小管を均一に並べる技術の開発にもっとも長い時間を割いた。なぜならば、微速度遠心法や磁場配向法など、数時間〜週の単位の長い時間が必要であった従来手法では、ATPやGTPなどの生理活性物質の分解・枯渇、構成タンパク質の変性などの問題点があり、活性の高い状態で構造解析することは不可能であったためである。試料を懸濁させた溶媒内で、高い流速勾配(shear flow)を形成する点、溶媒内にポリマーを入れる点、この2つの条件で、数秒以内に、数度以下の小さな角度偏差で繊維を配向させることに成功した。この条件を達成させるための特殊なチェンバーを数種類試作し、最終的に、20〜100μlの試料を用い、0.5〜100nmの周期構造の検出が可能で、0〜5,000s^<-1>の勇断流を発生させ、加温制御可能な装置として完成させた。配向特性は直接X線回折像によって直接確認した。チューブリン、ダイニン、スポーク等の軸糸構成要素の長軸方向の周期性の信号(子午線回折)と、微小管径やスペーシングを反映した信号(赤道軸回折)を明確に区別して検出することができた。また、ダイニンやスポークのラセン型配置が、ATP有無の条件下で変化することを示す観察結果を得た。微小管構造の詳細の解析も可能であることも示すことができた。
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