研究概要 |
高等植物の非光合成器官においては,極めてダイナミックなミトコンドリアの細胞内移動と形態変化が観察される.本研究は「ミトコンドリアはどのような仕組みで,また何のために,変形し,融合し,動き回るのか?」という問いに答えることを目標とする.初手として,極めて動的なミトコンドリアが観察される植物非光合成器官に着目し,そのミトコンドリア動態を司る未知因子の同定と機能解析により,植物ミトコンドリアダイナミクスの分子基盤と生理学的意義の解明を目指す 今年度の研究では,前年度に取得した,根のミトコンドリアの細胞内運動・細胞内分布・形態の様子が,同時期・同箇所の親株(変異誘発処理前の親系統)と異なるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)変異体の原因遺伝子同定をおこなった.これらのうち,伸長した根ミトコンドリアをもつ変異体(no.137)について,分子マーカー(SSLP ; Simple Sequence Length Polymorphism)を用いたマッピングにより,変異箇所を特定することに成功した.no.137の原因遺伝子は既知のミトコンドリア分裂因子遺伝子であったが,(1)同遺伝子産物の機能未知保存領域に変異箇所(アミノ酸置換)が存在していたこと,また,(2)同変異が優性変異であったことから,同領域のミトコンドリア分裂制御における機能が新たに示唆された.また,ミトコンドリアのサイズが不均一な変異体,ミトコンドリアが大型の球状となった変異体についても,SSLPによる原因遺伝子のラフ・マッピングを進めた
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