研究概要 |
本研究は、雑草防除に不可欠の農業資材である除草剤のうち、まだ作用機序が明確でないものについて、それらの標的分子や代謝系同定の困難さを克服する新規な手法としてプロテオーム解析を用いるという着想のもと、その有効性の検討と利用のための技術開発を行ったものである。 本研究ではまず、遺伝子およびタンパク情報の蓄積しているイネを用いて、除草剤の作用が発現する濃度で処理を行い、それらに対するタンパクレベル応答解析を行った。4種の水田用イネ科雑草防除剤(oxaziclomefone, cafenstrole, fentrazamide, pretilachlor)について、これらの処理によって発現が変動するタンパクを二次元電気泳動法によって検出し、質量分析計もしくはプロテインシークエンサーで同定した。また、これらの過程の最適化および迅速化の検討も行った。さらに、すでに標的分子が明らかである既存の剤についても、同様の方法でタンパク変動パターンのプロファイリングをしながら、作用機序との関係を解析した。一方で、除草剤の薬害を回避することを目的としたセーフナーを利用し、薬害軽減作用が見られる状態でのタンパク発現を調べることで、除草剤の作用機序や解毒機構に関する情報が得られるかどうかについても検討を行った。 これらにより、除草剤毎に発現が増加、減少するタンパクが明らかとなり、剤による特徴的な発現プロフィールを捉えることができた。また、同じ作用機序を有する剤では類似のプロフィールが示されたことから、作用機序の推定には有効であることが示された。ただ、発現量の多いタンパクでは変動が見やすいが、発現量の少ない可能性のある標的の追究という点では課題が残った。セーフナー処理では解毒酵素の誘導が確認され、除草剤によるストレス応答や解毒の分子機構研究にとって有力なツールとなると考えられた。
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