研究概要 |
酢酸菌は糖やアルコールを糖酸・有機酸に急速に酸化変換して培地中に高濃度蓄積する。「酸化発酵」と呼ばれるこの反応は細胞膜表層に結合した酸化還元酵素とそれにリンクした呼吸鎖末端オキシダーゼによって行われる特徴的な酸化反応系である。この「酸化発酵」呼吸鎖の末端には,チトクロムbo_3オキシダーゼとシアン非感受性オキシダーゼ(CIO)の2つの末端オキシダーゼが存在し,それらが複数の初発脱水素酵素と複雑に関連して機能している。本研究では,CIOの精製とその機能解析,およびケトグルコン酸発酵に関与するグリセロール脱水素酵素(GLDH)とグルコン酸脱水素酵素(GADH)と両末端オキシダーゼとの相互作用を解析することで,「酸化発酵」の機能解析も検討し、以下にまとめるような成果を得た。 1) CIO過剰発現株とCIO欠損株の細胞膜のスペクトル分析,EPR分析,さらにヘム分子のHPLC-マス分析の比較解析を行うことによって,CIO分子には3種のヘム分子(b558,b595,d)が存在することが明らかになった。 2) CIO過剰発現株の細胞膜からシアン耐性ユビキノール酸化活性をドデシルマルトシド(DM)で可溶化し,DEAE-ToyopearlおよびHydroxyapatiteを用いて、bo_3オキシダーゼとCIOを分離精製した。この精製CIO標品はSDS-PAGEで,53kdのブロードなバンドと33kdのバンドのメインバンドを示し,ヘムd由来の627nm付近のピークを示した。 3) ケトグルコン酸発酵において,CIO欠損株では5ケトグルコン酸の生産性が向上し,CIO過剰発現株で2-ケトグルコン酸の生産が増加することが示唆され,2つの初発脱水素酵素,GLDHとGADH,が関与するグルコン酸酸化反応のシアン(アジド)耐性能などの比較から,それぞれbo_3オキシダーゼとCIOにより強くリンクして機能していることが示唆された。
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