研究概要 |
諸外国からわが国に導入された外来魚が近年,各地で繁殖して大きな問題を起こしている。本研究は,知見が極めて少ないそれら外来魚の寄生虫相を調べるとともに,外来魚に特異的に寄生する寄生虫の増殖メカニズムを解明して,それら寄生虫の個体群維持機構を明らかにするものである。本年度は,淡水魚に寄生するカイアシ類の1種ヤマトニセエラジラミの個体数決定に関与する要因解析を行った。得られた知見は以下のとおり。(1)同一河川内の数ヶ所で採集した魚類におけるヤマトニセエラジラミの感染状況を調べた結果,本種は在来魚よりも外来魚に多く見られ,流れが遅くて水深があリ河川勾配のほとんどない下流域の魚類に多数寄生していた。(2)このような河川では,ブルーギルとブラックバスがヤマトニセエラジラミの主要な宿主であった。(3)沖縄県の貯水池や河川では近年,在来魚が激減し外来魚が広く分布するが,ヤマトニセエラジラミは豊度の高い外来魚(上記2種に加えて,シクリッド類,カダヤシ類など)を宿主としてうまく利用して,個体群を維持していた。この傾向は貯水池で顕著であった。これらの結果から,ヤマトニセエラジラミは外来魚(特にブルーギルとブラックバス)を個体群維持のために宿主として利用し,その感染状況は各水域の環境条件に大きく影響を受けていることが明らかになった。また,ブルーギルやブラックバスの水域内での分布や豊度の違いが,当該水域におけるヤマトニセエラジラミの分布や個体数に大きな影響を与えていることも明らかになった。
|