研究概要 |
根圏に工業用硬性鏡(ボアスコープ)を挿入し,根圏を観察しながら根の近傍から土壌溶液を採取し,その溶液を解析するシステムの構築を行った。昨年度は観察システムと土壌溶液採取システムをほぼ完成させた。今年度は得られる200μL程度の土壌溶液の分析方法を検討し,実サンプルでの測定を行った。 土壌溶液の元素分析はICP-MSで行った。Mn,Cu,Zn,Mgについては通常の方法で分析ができたが,Fe,K,Caについては妨害イオンとなる多原子イオンの除去のため,メタンガスを流すリアクションモードでの測定が有効であった。また,Clについてはそのまま分析が可能であったが,F,I,Brについては安定性と感度の問題で十分な測定は困難であった。また,PとSについては,酸素ガスを導入し,PO^+あるいはSO^+として測定することが可能であった。 pHの測定については,量が微量なため蛍光試薬を用いた方法あるいは半導体センサーを用いた方法を検討したが十分な精度が得られず,さらに改良が必要であった。また,クエン酸,シュウ酸,酢酸などの有機酸の分析はキャピラリー電気泳動法を用いたが,原液の測定であれば5ppm程度あれば定量が可能であるが,20倍に希釈した場合には検出限界以下となり測定がうまくいかない場合もあった。 実試料の測定として,コマツナを栽培した畑土壌の分析を行った。その結果,潅水後数時間程度の土壌水分が充分にある状態では,数時間で予定した量の土壌溶液を得ることができた。しかし,乾燥が進んだ状態では,十分な量の土壌溶液を得ることができなかった。 また,根圏と非根圏の土壌溶液の成分の違いを検討したところ,測定値の変動係数が大きく違いを明瞭にすることはできなかった。 以上をまとめると,根圏を観察しながらの土壌溶液採取と採取した溶液の金属分析を行うシステムの構築という当初の目的は達成することができた。しかし,根圏と非根圏の土壌容器の組成の違い明確にしながら根圏土壌の特徴を明らかにするには,さらに改良が必要であった。
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