研究概要 |
HeLa細胞において, 細胞内小胞輸送関連タンパク質HrsをSiRNAを用いてノックダウンするとβGal活性の上昇などの細胞老化が観察された。そこで, Hrsによる癌細胞老化抑制機序を明らかにするために, Hrs欠損マウス由来細胞をin vitroで癌化することにより, Hrs完全欠損の癌細胞老化における効果を検討することを試みた。最初に, LysM-Cre/Hrs^<flox/flox>マウス由来線維芽細胞(Hrs^<flox/flox>MEF)およびLysM-Creマウス由来線維芽細胞(WT-MEF)にSV40-LargeT遺伝子を導入し不死化細胞を得た。さらにHrs^<flox/flox>MEFおよびWT-MEF細胞に活性化型H-ras遺伝子を導入し癌化した各細胞株も樹立した。これらの細胞の長期培養を行い, βGal活性の上昇、INK4a発現を指標に, 細胞老化の程度を検討した。しかしながら, Hrsの有無により明らかな細胞老化の差異は観察されなかった。また, in vitroの細胞増殖能にも有意な差異を認めなかった。従って, HeLa細胞で見られたHrsノックダウンで見られた効果は残念ながらHrs欠損マウス由来のMEF細胞株では再現できなかった。その原因として, ヒトとマウスにおけるHrsの役割の違いや, 遺伝子ノックダウン法によるHrs不完全欠損と, 遺伝子欠損マウス由来組織におけるHrs完全欠損の細胞おける効果の違いなどが考えられた。以上の実験結果により, 当初の研究計画は途上で断念せざるを得ない結果となった。
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