研究課題
挑戦的萌芽研究
がん幹細胞の存在が、がん治療後の再発や転移に大きく関わってくるため、がん幹細胞を標的とする治療法および診断法の開発が求められている。治療法および診断法を開発するためには、がん幹細胞の特性を解析しなければならない。しかし、がん幹細胞は不均一ながん細胞集団に非常に少ない割合でしか含まれていないため、効率良く単離できたとしてもその解析には困難を要する。それは、培養により純粋な細胞集団として増殖維持させることが極めて困難であるからである(特性の解析には大量の細胞数が必要)。前回、がん幹細胞を選択的に強く蛍光標識し、単離することに成功したが、純粋ながん幹細胞として得られる数量が非常に少ないため、分子細胞生物学的手技による細胞特性の解析にはやはり困難を要した(培養により増殖させると分化により性質が変化する)。この問題を解決するために今回、単一の性質を示すがん幹細胞をクローン化し、増殖させるためのコンストラクトを開発した。幹細胞に選択的に発現しているCD133遺伝子を選択し、このプロモーター制御下に薬剤耐性遺伝子(ハイグロマイシン性遺伝子)を挿入した新規コンストラクトを作製した。前立腺がん細胞株PC3にトランスフェクションし、ハイグロマイシン添加培地により増殖してくる細胞群を得た。さらに、シングルセルクローニングを行い、最終的に4種のクローンを得る事に成功した。いずれもCD133を高レベルに発現維持していることを確認した。形態は、球形で浮遊性に富んだ性質を示した。また、親株に比較して非常に転移能が高い事も動物実験より判明した。これらの細胞は、抗生物質添加培地で培養している限り、同じ特性を示すため(分化の方向に進むと抗生物質により淘汰される)、がん幹細胞の特性解析において非常に有用な材料となりうることが大いに期待された。一方、各種がん細胞株を検索し、CD133を高率に(90%以上)発現しているがん細胞株を同定した。この細胞は非常に心性であり、高度の転移・浸潤能をもつ。本細胞株は自然に幹細胞様特性を獲得したがん細胞の形質を抑制する研究や、CD133遺伝子発現調節の解析に好適である。
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