研究課題
萌芽研究
非自己と自己との識別は免疫学ばかりでなく、多細胞生物にとって普遍的なホメオスタシスの問題である。免疫学では、この問題について、主にリンパ球の抗原受容体の特異性によるクローンの選択、寛容誘導、その維持という薪究が進められてきたが、リンパ球を持たない動物種においては明らかではなかった。To11様受容体のような病原体センサーが発見されることで、その理解が大きく進んだといえる。自己応答性を抑制しようとする抗原受容体と対照的に、TLRは非自己である癖原体を直接認識し、排除する。すなわち、TLRは「非病原体」という全く異なる自己の定義をしている。しかしながらTLRが自己成分にも応答しうることが示唆された。TLRは常に自己を認識して何らかの応答を誘導することでバランスが保たれており、そのバランスの乱れが自己免疫疾患をひきおこすという可能性が示唆された。本研究ではこの点を明らかにするために、細胞表面に発現するTLR2/TLR4/RP105の内因性リガンドに対する応答の解析と、TLR7とTLR9の応答性のバランスを制御する分子機構の解明についての解析を進める。本年は、特にB細胞表面上のTLR2, TLR4/MD-2、RP105/MD-1の自己免疫疾患における役割についての解析を進めた。RP105が欠損すると、B細胞においで、TLR2、TLR4両方の応答が低下することを我々は既に報告している。自己免疫疾患モデルマウスであるMRL/lprにRP105KOマウスを掛け合わせて、自己免疫疾患に対する影響を調べた。その結果、自己免疫の症状は軽減することが明らかとなり、これらのTLRが自己免疫疾患に関わっていることが明らかとなった。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Int. Immunol. 20
ページ: 881-891