研究概要 |
我々は現在まで、生活習慣病の根幹であるエネルギー代謝に関わる遺伝子の発現制御機構について研究を行ってきている。生活習慣病の発症には長期的な遺伝子機能の破綻が原因になっていることが推測されている。そのため、エネルギー代謝に関与する遺伝子群の発現を制御、その制御を行う転写因子の機能の解明が生活習慣病の治療へ繋がる。生活習慣病に関与する遺伝子発現制御機構について多くの報告を行ってきている(Matsuzaka T Nature Medicide2007,Nakagawa Y Nature Medicide2006,KatoT Celle Metabolism2006,lde T Nature Cell Biology2004)。 新たなRipにより制御される新たな膜結合型転写因子としてCREB-Hに着目している。CREB-Hはエネルギー代謝調節の責任臓器である肝臓に発現が限局しており、加えて、栄養状態により、その発現量を変化させる。このことから、CREB-Hのエネルギー代謝、生活習慣病との関連に焦点を当て研究を行っている。プレリミナリーなデータとして、CREB-Hの発現はマウス個体において、血糖値、血中インスリン値の低下を引き起こすこと、摂食意欲(食欲)の低下を引き起こすデータを得ている。さらに、CREB-Hの標的の一つとして肥満改善機能を有する液性因子FGF21(Kharitonenkov A JCI 2005)の発現を上昇させるデータを得ている。FGF21は絶食時、CREB-Hと同様に発現が上昇する点、生活習慣病を改善する機能を有すること、また、食欲などの行動性の低下が報告されており(Badman MK Cell Metab.2007,Inagaki T Cell Metab.2007,2008)、CREB-Hの機能の一部はFGF21を介した経路によるものと推測される。
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