研究概要 |
若年型骨髄単球性白血病(JMML)は幼少期に発症する稀な骨髄増殖性疾患で、70%以上の患者でRAS、PTPN11、NF1遺伝子のいずれかの変異が同定されている。染色体レベルでは、患者の25%にモノソミー7、10%に他の染色体異常を認める。しかし、残りの患者では遺伝子変異は同定されず、染色体分析でも正常核型を示す。近年、マイクロアレイCGH法を用いて、JMML患者検体から3つの腫瘍抑制遺伝子候補(MIKI, TITAN, KASUMI)が7番染色体上に同定された。そこで、国際基準によりJMMLと診断された患者を対象とし、これら3遺伝子の欠失および遺伝子変異の有無と、他の遺伝子変異との関連について検討した。[方法]初診時の骨髄細胞からDNAを抽出した。MIKI, TITAN, KASUMIの3遺伝子領域に約30,000個のプローブを配置したアジレント社超高密度カスタムCGHアレイを設計・注文し、同領域の微小欠失が従前のCGHアレイで推測されていた2症例においてゲノムコピー数を定量した。また、49例のJMMLにおいてアフィメトリクス社SNPアレイによる解析を行った。[結果]MIKI, TITAN, KASUMI領域の欠失は、超高密度カスタムアレイでは認められなかった。また、SNPアレイによるゲノムコピー数の49例の解析では、7番染色体の微小欠失は見出されなかった一方、11qUPDの集積を10%の症例で認め、関連するc-Cbl遺伝子変異が新規JMML原因遺伝子であることを同定した。[考案]JMMLにおける7番染色体微小欠失の存在は、高密度CGHアレイ、SNPアレイのいずれでも確認することができず、次世代シークエンス等の、より高度な技術の導入が必要であると考えられた。またJMMLの新規原因遺伝子として同定されたc-Cbl遺伝子が、既知のJMML原因遺伝子群が属するRAS pathwayにどのように関与しているのか、今後の検討課題である。
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