研究課題
挑戦的萌芽研究
前年度から引き続き、3頭の成熟アカゲザルに認知機能検査(遅延反応課題)を行った。ベースラインの認知機能検査を行った後、ムスカリン受容体阻害薬(スコポラミン)の認知機能への影響ならびにムスカリン受容体への占有率をPET測定にて調べた。スコポラミン(0.01 or 0.03mg/kg)は、サルに筋肉内注射にて投与された。認知機能検査とPET測定は、スコポラミン投与前と投与後(2,6,24,48時間後)におこなった。認知機能検査コントロールは、生理食塩水をスコポラミンの代わりに用いた。認知機能:全てのサルはスコポラミン投与2時間後、用量依存的に成績低下を示した。検査の反応時間は、コントロールとスコポラミン投与で変化がなく、スコポラミンは運動障害を起こすことなく認知障害を誘発する事が明らかになった。スコポラミン投与6時間後でも、認知障害が観られたが用量依存はなく程度も2時間後より軽いものであった。24時間後の認知機能は、完全に回復していた。PET測定:ムスカリン受容体に特異的に結合するトレーサー[11C]-3MPBを用いて、コントロール状態ならびに、スコポラミン投与後のPET測定を行った。コントロール状態と比較して、スコポラミンが誘発した[11C]-3MPBの結合低下を占有率とした。スコポラミン投与2,6時間後では、用量依存的なムスカリン受容体の占有が観られた。0.03mg/kgのスコポラミンのムスカリン受容体への占有率は、2時間後で80%以上であった。24時間後においても20%程度の占有が観られ、48時間後に占有が観られなくなった。スコポラミンが用量依存的に認知機能障害を誘発するのは過去の知見に合致する。この時、ムスカリン受容体が用量依存的に占有することをPETを用いて初めて証明した。また、24時間後では認知機能障害が観られないものの、スコポラミンの作用が持続していることも明らかになった。
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