研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、COX-2・EGF受容体・DNA-PK・ATMが一つのネットワークを作っていると仮定し、これらの関係と放射線による影響を明らかにすることにより、癌に特異的な放射線増感のために最も効率的な分子標的を探索することを目的とする。EGF受容体やCOX-2は一部の癌で過剰発現していることから、正常組織に比べ癌組織で特異的に放射線増感することが可能と考えられる。作業仮説として、「COX-2・EGF受容体は、DNA-PK・ATMを介して放射線感受性に関与している」と考えて研究を進めた。COX阻害剤としては、イブプロフェンとインドメタシンを放射線照射前に投与して、放射線によるERK1/2活性化が抑制されるかどうかを検討した。実験の結果、それらのCOX阻害剤により放射線によるERK1/2の活性化が抑制される傾向が認められたが顕著ではなかった。イブプロフェンとインドメタシンはCOX-1とCOX-2の阻害剤であるため顕著な結果が得られなかった可能性が認められたので、COX-2選択的阻害剤であるmeloxicamとCOX-2 inhibitor IIを用いて実験を行った。meloxicamとCOX-2 inhibitor IIはイブプロフェンやインドメタシンよりもより強く放射線によるERK1/2の活性化を抑制した。COX-2選択的阻害剤は放射線によるp53 Ser-15のリン酸化を若干抑制した。また、ATM活性化を活性化特異的抗リン酸化ATM抗体により評価した結果、COX-2選択的阻害剤は放射線によるATM活性化を部分的に阻害した。これに対し、COX-2選択的阻害剤は紫外線によるATR活性化には影響を与えなかった。COX-2選択的阻害剤は放射線照射後の細胞生存率を低下させたが、その程度は細胞の種類によって大きく異なった。
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