研究概要 |
放射線照射により誘導される酵素を標的とする放射性薬剤を開発することで、新たな内用放射線療法が構築できるのではないかと考え、本研究では、NAD(P)H : quinone oxidoredactase 1(NQO1)という酵素に注目し、NQO1の選択的阻害剤であるES936のニトロ基を放射性ヨウ素原子に置換した化合物、5-methoxy-1, 2-dimethyl-3-[(4-[^<125>I]iodophenoxy)methyl]indole-4, 7-dione([^<125>I]1)の合成に成功した。本年度は本標識化合物の評価を行った。まず、[^<125>I]1をマウス血漿中においてインキュベートしたところ、6時間後で80%以上が未変化体として存在した。また、[^<125>I]1のマウス生体内分布を評価したところ、投与後6時間で大部分が尿中へ排泄され、肝臓、腎臓への集積も少なかった。これらの結果、[^<125>I]1が、内用放射性薬剤の具備すべき特性である、生体内での安定性と速やかなクリアランスという条件を満たすことが示された。一方、NQO1を発現する腫瘍細胞、HT29への[^<125>I]1のインビトロにおける取込量を評価したところ、初期に高い取込を示し、その後、徐々に細胞外へと排出された。TLCにより分析したところ、この細胞外流出は代謝物としてp-[^<125>I]iodophenolが生成することに起因することが明らかとなった。また、非放射性の1の存在下での[^<125>I]1の取込量は有意に減少したことから、HT29への集積はNQO1特異的であることが示された。
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