研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、抗癌剤の臓器特異性及び組織移行性を決める薬物輸送体の概日周期(サーカディアンリズム)発現振動の存在とそのメカニズムを明らかにし、そのリズム内の任意のサーカディアン時刻を生体内で再現できる、疑似サーカディアン時刻発生システム、すなわち「バイオクロック(人工生物時計)」を構築し、癌細胞における薬物輸送体群の発現を制御・同期化させることにある。将来的には、バイオクロックにより同期化させた疑似サーカディアン時刻により、抗癌剤を癌細胞内に輸送する各特異的薬物輸送体の発現が最大量を呈する時刻に合わせて抗癌剤を投与し、最大限の抗腫瘍効果を目指す「シンクロナイズド・ケモテラピー」への応用の可能性を探索したいと考えている。申請者の専門疾患である胆道癌培養癌細胞株において、経時的にtotal RNAと細胞膜蛋白を抽出し、胆道癌に対する第一選択薬であるGemcitabine(GEM)感受性・耐性因子となり得るABC輸送体、SLC輸送体遺伝子群のmRNAの発現をreal-time PCR法で、蛋白の発現をLC-MS/MSにて定量化を行った。高濃度の血清を培地中に添加して細胞周期の同期化をはかり、同様に検討したところ、薬物輸送体の概日発現振動の存在を確認した。現在、各定量時刻におけるGEM感受性をMTTアッセイにて検討し、得られた各薬物輸送体の経時的定量情報との相関を検討している。胆道癌培養癌細胞株に種々の長さの輸送体遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子を結合したプラスミドを導入し、レポーター活性を測定して発現に必須の領域を検討中である。
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