研究概要 |
倫理委員会の承諾の下、大阪府立成人病センター骨軟部腫瘍科(整形外科)との共同で、患者手術検体よりin vitroの培養で数症例の軟部悪性腫瘍細胞株を樹立できた。これらはin vitroの培養で容易にスフェロイドを形成した。 また表面細胞マーカーによる選別なしで100-200個の細胞を免疫不全マウスに移植すると腫瘤を形成し時に肺転移を生じること、さらに下記のようにがん幹細胞としての性質を有することを見いだした。 1.樹立した滑膜肉腫細胞株2例(YamatoSS, AskaSS)を用いた検討により、滑膜肉腫が骨、軟骨、脂肪、神経さらに血球系(マクロファージ)に分化可能な多機能幹細胞に、染色体転座より生じたSS18-SSX融合遺伝子産物が発現することより生じていること。SS18-SSXのsiRNAによる発現抑制に伴い、IL-6の産生、分泌が著しく亢進すること。(Stem Cells, in press 2010) 2.SS18-SSXのsiRNAによる発現抑制に伴い,スフェロイドより接着系への形態変化を生じ、microarrayによる発現解析で、細胞骨格や接着に関係する遺伝子が主に発現変化すること。(Int J Oncology, 2010) 骨軟部悪性腫瘍臨床例の発現解析では、Oct3/4, Nanog, Sox2等の幹細胞関連遺伝子の発現頻度が高く、滑膜肉腫以外のclear cell sarcomaやEwing sarcomaからも複数の細胞株を樹立しており、今後骨軟部腫瘍の起源細胞の探索と、共通する性質を標的とした新規治療の開発への足がかりができた。
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