研究概要 |
Severe sepsis/septic shockにおけるcytokine活性化の制御を企図したimmunomodulative therapyを血液浄化法を中心に平成21年度も臨床での検討結果をまとめ,学術集会や論文投稿しその成果を報告した.一方,本研究の主旨であるsevere sepsis/septic shockの病態生理におけるcytokine productionの制御系,特に副交感神経系を介した抗炎症反応系(cholinergic anti-inflammatory pathway)の解明についても動物実験に基づき開始した。オスSDラットを用い,敗血症cecal ligation puncture (CLP)モデルを作成したのちに副交感神経刺激薬を投与し,それにより単なるCLPモデルと治療介入群とで,各種cytokine動態や生存率差を検討した。その結果,コントロール群に比較しCLPモデルラットで副交感神経刺激薬投与群では,各種炎症性サイトカインの産生抑制,及び生存率の向上がみられた.またこれらの実験系で心電図をモニタリングし解析用コンピュータに接続後,心拍変動解析(HRV解析)を行ったところ,CLPモデル下で相対的交感神経活動優位の状態がHRV解析で捉えられる傾向があり,副交感神経刺激薬投与後には,副交感神経活動優位のパターンがHRV解析で得られる傾向があった.以上より,ラット敗血症モデルにおいて,自律神経系を介したanti-cholinergic pathwayによるinflammatory reflexの存在が示唆され,同現象は心電図を連続モニタリングする事によりHRV解析を実施することで捉える事ができると考えられた.今後は,同モデルを用いた他の自律神経作動薬の効果を確認し,既に臨床で行われている血液浄化法に加えた新たなimmunomodulation therapyとして確立したい.
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