研究概要 |
リポポリサッカライド(LPS)の静脈内投与を施した8~12週齢の雄性BALB-Cマウスにおいて,敗血症類似病態の時系列に沿って,サイトケラチン陽性多能性上皮分化細胞(epidermal progenitor cell)が肺に動員されることを組織科学的方法で確認した。これらは,podoplanin(1型肺胞上皮細胞マーカー)ではなく,SP-C(2型肺胞上皮細胞マーカー)やcaveolin-1(血管内皮細胞)と共存する傾向があり,Gr-1あるいはvon Willebrand因子と共発現していることが免疫組織科学的手法で明らかとなった。また,抗サイトケラチン抗体IgGビーズや抗caveolin-1抗体IgGビーズを用いて,epidermal progenitor cellを分離した結果,共にGr-1を強く発現することが確認された。 一方,骨髄抑制を特徴とするop/opマウスにLPSを静脈内投与し敗血症類似病態とすると,epidermal progenitor cellの肺への動員が消失した。さらに野生型BALB-Cマウスとop/opマウスにおいて,LPS10mg/kgおよび20mg/kgの腹腔内投与による生存曲線を比較すると,op/opマウスで死亡率が高いことが確認された。Epidermal progenitor cellが骨髄由来であることをさらに評価するために,GFP-BMTマウスを用いて,LPS10mg/kgおよび20mg/kgをGFP-BMTマウスの腹腔内に投与し,GFPとサイトケラチンの共陽性細胞が肺に出現するかを確認した結果,LPS投与の約1~3時間よりこれらの細胞が肺に集積しすることが確認された。 本研究は敗血症病態におけるepidermal progenitor cellの肺への動員を評価したものである。従来,幼弱球として分類されてきた敗血症病態の白血球は,骨髄より動員され,肺胞2型上皮細胞や血管内皮細胞に分化できる可能性を持つことが確認された。
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