研究概要 |
ポリカチオン(ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジン、キトサン、プロタミン)とDNA(300bp)から得られた水不溶性の複合体を加温(50℃)・加圧(5MPa)の条件下で透明フィルムを作成した.なお,ポリアルギニン(mol wt:5,000-15,000)、ポリヒスチジン(mol wt:>5000Da)、ポリリジン(mol wt;4,000-15,000)は低分子物を用いた.そして,細胞接着性およびラット皮下埋入実験を骨格とした各種フィルムのin vitroおよびin vivoでの特性について検証した.マウス由来MC3T3-E1細胞,正常ヒト滑膜間質細胞,ヒト皮膚線維芽細胞,正常ヒト表皮化細胞を各種フィルム上に播種し,経時的(3時間,24時間,3日,5日)に接着状態を顕微鏡にて観察した.いずれの細胞もすべてスフェロイド形成になり,フィルム間に大きな違いは無かった.したがって,癒着防止膜への応用が示唆された.DNA/キトサン複合体フィルムのラット皮下内での分解速度は遅く試料の一部カプセル化が起こっていたが,他のフィルムはすべて1週間以内に分解しておりすべて消失していた.すべての複合体フィルムにおいて初期には軽度の炎症反応が認められたが、その後は炎症も治まり器質化が進行し,消失した.低分子のポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリリジンおよびプロタミンを複合体の素材とする場合はやや分解速度が速いので複合体フィルムの用途に応じてポリカチオンの分子量の調製が必要であることが示唆された.なお,DNAは分子量の増大とともに分解速度が遅くなることも判明した.したがって,DNAの分子量を調製すれば複合体の分解速度の調整も可能であることが判明した.
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