研究概要 |
有用な形質を付与した遺伝子組換え植物の利用が実現的なものになってきた.種子内で発現蓄積した組換えタンパクは非常に安定性が高く,抗体を発現させた場合でも室温保存で何年も分解しないことが報告されている.このような組換えタンパクとして,歯周疾患原因組菌の病原因子を発現させ,歯周疾患に対する免疫を誘導することができれば,ワクチンの開発につながるものと期待できる.組換え植物を摂取することに対する議論は存在するものの,このような食べるワクチンはウイルス由来ワクチンに比較すれば安全性は高いと考えられる. そこで本研究では,歯周病原性菌であるPorphyromonas gingivalisの線毛遺伝子をイネに組換えてコメに発現させることを最終目標とし,それに必要な植物への細菌由来タンパク遺伝子の組換え技術の確立をめざしてきた. 昨年度は,P.gingivalis線毛タンパクに蛍光を発するGFPを融合させ,菌体や植物内でトレース可能なタンパクの作成を試みたが,大腸菌内での毒性のためか,有効なクローンが得られなかった.今年度はその問題を解決するためにコピー数の少ないプラスミドを利用して,発現量を減少させ,クローンを得ることを試みた.GFP発現システムから,発現に関わる部分をカセットとして切り出し,低コピーベクターのpMW119に組み込み,低発現GFPベクターを作成した.とれにクローニングしたfimAを導入してGFP-fimA融合タンパクの作成を試みた.クローンは得られたが,発現量が少ないためか,十分な蛍光を観察することができなかった. 今後,他の蛍光タンパクや発現システムを用いて良好なマーカー蛋白の発現システムを模索する必要があると思われた.
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