研究概要 |
今年度は,高齢者を対象とした実地検証を目指し,近隣の老人施設にて,研究の理解と協力の同意を得た。入所高齢者5名を対象として,下肢マッサージ器(アクティブモア,MD5600)による測定部のマッサージおよび下肢バイブレーション,入眠効果が期待されるとされる音楽(眠りを誘う音楽ベスト,キングレコード)を就寝時に聴取,就寝前30前に足浴等の介入を行った。 入眠効果判定の指標には,主観的指標としてピッツバーグ睡眠質問票(過去1ヶ月の睡眠について)およびセントマリー病院睡眠質問票(前夜の睡眠について)を用いて聞き取った。客観的指標としては壮年期の対象ではBISモニタを用いたが,高齢者(特に施設入所者)ではケーブルの絡みや装着の違和感に懸念があり,体動センサー式睡眠計スリープスキャン(タニタ,SI-501)を用いた。 その結果,足浴による介入では,それ自体で‘きもちいい’との発言があり,それなりの入眠促進効果が感じられた。音楽の聴取では,普段からラジオを聞いている入所者もいて,対象の個人特性が大きく左右しているようである。また,入所環境(同室者および近隣の入所者による音響環境)も影響しているようであった。マッサージ器による下肢循環促進は最も期待した介入法であったが,施設入所者への適用では,刺激が強すぎるようで,介入を断られるケースが多く,効果の検討には至らなかった。これらの介入は壮年期の対象で一定の効果が認められたものであり,入所高齢者を対象とした介入にも一定の効果が期待できるものと考えるが,長期的に実施した場合,その効果が持続するものかは検討の余地がある。一般的に入所高齢者の一日の身体活動量は多くない。日々の生活において良質な睡眠を得るには認知行動療法的アプローチを考慮する必要がある。高齢者の生活パターンの分析とそれに合わせたアプローチの検証を今後の課題としたい。
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