配分額 *注記 |
90,090千円 (直接経費: 69,300千円、間接経費: 20,790千円)
2011年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2010年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2009年度: 47,320千円 (直接経費: 36,400千円、間接経費: 10,920千円)
2008年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
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研究概要 |
本研究は新たな均一系鉄触媒による一群の精密炭素-炭結合生成反応を開発することで,今後の社会が直面してゆく資源・環境問題の解決技術に資する次世代型の精密有機合成化学の開拓に挑むものである.昨年ノーベル化学賞の受賞対象となったクロスカップリング反応は,現在の化学工業において医薬品や農薬,有機電子材料や液晶材料の開発,工業生産に欠かせない化学反応である.この反応には,パラジウムやニッケルなどの希少金属が広く用いられているが,これを鉄触媒に置き換える試みと,さらには鉄触媒によるより効率的な合成化学の開拓を目指して研究をすすめている.これまで我々が開発した鉄触媒クロスカップリング反応は.マグネシウム反応剤を用いたクロスカップリング反応には過剰量のTMEDAの添加が必要であり,これからの工業化などを念頭においた実践的鉄触媒の開発に主に取り組んだ.ハロアルカンを基質に用いたクロスカップリング反応は開殻系の中間体経由で反応が進行していることから鉄中間体としてハイスピン状態を優先して与える配位子の設計と合成を行った.既存のDPPBz配位子に嵩高い置換基を導入した新規キレートボスフィン配位子SciOPPの創製に至った.同配位子と鉄の錯体を調製したところ,鉄触媒による熊田・玉尾・Corriu反応,根岸反応,鈴木・宮浦反応の有効な触媒となることが明らかとなった(国際特許公開).また同配位子を和光純薬工業から試薬として販売するに至り,実用化への第一歩を踏み出せたと考えている.この他にも鉄属元素であるニッケルを用いた新規アルケニル化クロスカップリング反応の開発にも成功し,米国化学会誌に報告した,本論文は9月に同誌に掲載された全論文中第6位のアクセス数を獲得するなど,広く注目を集めた.またクロスカップリング反応以外にも配位子による立体選択的カルボメタル化反応の開発に成功し,論文をAngew.Chem.Int.Ed誌に発表した.これらの成果をもって当初予定していた鉄触媒クロスカップリング反応の開発および立体選択的炭素-炭素結合生成反応の開発に成功し,本課題研究の目標を達成した.
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