研究課題
若手研究(S)
申請者は、分子量500を超える巨大複雑天然物の全合成の超効率化のための、独創的戦略・方法と高度一般化を目指している。平成22年度は、複雑な基質に利用できる新たな直接官能基化反応の開発に成功した。また、複雑天然物であるリアノジン、クロトホルボロンとウアバインの新たな合成戦略を確立した。前年度に光を利用した分子内反応による炭素環アシル化反応を基盤とし、分子間反応による炭素環修飾法の開発に取り組んだ。その結果、ペンタフルオロフェニルイソシアネートが直接カルバモイル化に有効に機能することを見出した。特に、2環性化合物の立体的に混んだ位置に、直接的に酸化度が高い炭素ユニットが導入できる点で、有機合成的に大きな価値を持つ。さらに、ベンジル位C-H結合の直接的ニトロオキシ化を実現する新しい複合試薬を開発した。得られたニトロオキシ基は、ヒドロキシ基・アセチルアミノ基・アジド基・シアノ基などへと1工程で容易に変換でき、合成的に極めて有用である。リアノジン・クロトボルボロン・ウアバインは、重要な生物活性を有する巨大複雑天然物である。これらの全合成が極めて困難な分子に対してラジカル反応を鍵とした3つの新戦略を活用し、多酸素官能基化された中間体の合成を達成した。まず、2官能基同時変換と反応性の高い橋頭位ラジカルを用いる合成戦略により、11連続不斉中心を持ち15位ヒドロキシ基とピロールカルボン酸以外のすべての構造を有する15-ヒドロキシリアノドールを構築することに成功した。次に、Horner-Wadsworth-Emmons反応による連結と分子内橋頭位ラジカル付加反応による7員環構築とを組み合わせて、クロトボルボロン全合成のための重要中間体を得た。さらに、ブロモアセタールを用いた連結反応と続くラジカルによる炭素-炭素結合形成を鍵反応とした、ウアバインの収束的合成法を開発した。
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