研究課題
若手研究(A)
ヒト生殖補助医療における、選択的単一胚移植へ向けた体外受精卵の品質モニタリングシステムの開発を行い、以下の研究成果を得た。まず、ヒト卵子においても受精後にMII期からPN期にかけて約3倍硬化する現象が確認された。これまでに示されたマウス、ウシ、ブタと同様の種を超えて普遍的な現象であると思われる。次に、胚盤胞移植を施行した胚盤胞のICM及びTEの弾性率を測定したところ、単一胚盤胞移植による着床胚の弾性率は、着床に至らなかった胚の弾性率より、高い傾向を示した。良質卵ほど「表層反応」と「胚盤胞の拡張に伴う透明帯の変化」が活発になり、前核期における硬化と軟化を促進すると仮説し、特に単胎妊娠を希望しMTS検査に同意が得られた症例1周期8卵子について、MTS測定結果に基づくeSETを行ったところ、健全な女児が誕生した。同時に、MTS透明帯弾性率測定が胚発生に及ぼす影響が無いことを確認している。また、マウス未受精卵成熟過程において透明帯が軟化する現象が確認されたことから、未受精卵の品質評価が出来る可能性が示唆された。さらに、より卵子に優しい非侵襲な計測法の開発のために、光学的顕微鏡観察による透明帯厚さと弾性率の関係について調べたところ、透明帯が厚い症例は硬度が高く、ハッチング障害の存在を示唆した。加えて、低毒性、完全無血清の安全性の高いガラス化保存システムの開発を行い、従来法と同等の成績を達成した。
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