研究概要 |
本年度は,高分解能バイオマスマップの作成及び検証用の衛星データの高頻度観測をチベット高原サイトで行った。収集したデータはASTER, SPOT/HRG, TerraSARXの各データであり,フェノロジー観測を行うために春先の4月から10月にかけてひと月に一枚以上のデータを取得することができた。その一方で,チベット地域の政情不安などの理由により現地に赴いて現場観測を行うことはできなかった。また,初期解析としてSPOT/VEGETATIONとTerra/MODISの10年近くにわたるデータセットから二つの植生指数(EVI, NDWI)を計算しバイオマス変動の把握を試みた。そしてアジア地域の草原の10年スケールの変動を1kmの空間解像度で評価した。その結果,この地域のバイオマス変動は,バイオマス分布図を国境データと重ね合わせるとモンゴルと中国の国境付近で明瞭な違いが見受けられた。まずモンゴル国内のゴビ砂漠の北の半乾燥草原では,広い領域にわたって草原バイオマスが減少していることが明らかとなった。一方で,ゴビ砂漠の東に位置する中国国内の内モンゴル自治区内の半乾燥草原においては,バイオマスの減少は確認されなかった。こうした国毎の違いは,半乾燥草原のバイオマスが単に雨量や気温などの気候変動によって変化しているのではなく,人為起源の影響(国毎に異なる土地利用の方策の違い)が大きな要因となっていることを示す結果である。今後,高分解能データを用いて詳細に検討することでこのバイオマスの変動をより詳細に把握することができると考えられる。
|