研究概要 |
本研究は,両手協調動作すなわち複数の制御対象の運動をコントロールする際に,大脳および小脳がどのように役割分担かつ連携しているかを探ることを目的とした.ヒトを対象とした心理物理実験と脳機能測定法を組み合わせる研究とともに,サルを対象とした手首運動中の小脳内ニューロン活動の記録も行い,上肢運動中の脳活動について2つのレベルの視点から検討を行った.その結果,ヒトより測定する脳血流量変化を指標とした2つの研究では,(1)大脳,小脳の運動関連領域がともに詳細な運動指令パターンを反映した脳活動を示すこと,(2)同部位がともに両手協調動作において重要な役割を担うことが認められた.一方サルより測定したニューロン活動記録では,上肢運動時には(1)大脳運動関連領域で作成された運動指令と同等の活動が苔状線維によって小脳運動関連領域に入力しており,小脳入力層の働きによって精緻化された上で,プルキンエ細胞に受け渡されている可能性が示唆された.また,(2)プルキンエ細胞の出力を受ける小脳核は,その分布位置によって運動遂行における役割が異なっている可能性が示された.その意味するところは,大脳内の異なる部位への投射であり,運動遂行の段階に応じて大脳と小脳は担当部位を変えながら常に連携してコントロールを行っている可能性がある.この制御ルールは両手協応動作でも保たれていると考えられる.
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