研究課題
若手研究(B)
身体運動、特に持久的な運動を行うことで、骨格筋のミトコンドリアが増加することが古くから知られていたが、その分子メカニズムは不明なままであった。先行研究により、肝臓におけるミトコンドリア増加機序に新規転写補助因子Lipin-1が関与していることが報告されている。そこで、本研究では、運動による骨格筋ミトコンドリア増加機序におけるLipin-1の役割について検討した。まず、運動が骨格筋のLipin-1発現量に及ぼす影響を検討するために、3〜6時間の水泳運動を行ったラットから上腕三頭筋を摘出し、Lipin-1のmRNA発現量をRT-PCR法にて分析した。その結果、一過性の運動により骨格筋のLipin-1 mRNA発現量が約2倍増加することが明らかとなった。運動で増加したLipin-1によって骨格筋のミトコンドリア新生が引き起こされるか否かを検討するために、ラット由来の骨格筋培養細胞(L6 myotube)にHuma Lipin-1遺伝子を導入し、過剰発現させた。その結果、Lipin-1を過剰発現させた細胞では、ミトコンドリアの代表的な酵素であるALASやmCPT-1のmRNAの有意な増加が認められた。次に、運動によるLipin-1発現増加に関与する細胞内情報伝達経路を検討するために、ラットにβ2アドレナリン受容体の活性化剤(Clenbuterol)およびAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化剤(AICAR)を投与した。その結果、それぞれの活性化剤の投与6時間後において、上腕三頭筋のLipin-1 mRNA発現量の増加が認められた。以上の結果から、運動による骨格筋ミトコンドリアの増加機序に、β2アドレナリン受容体とAMPK活性化に伴う転写補助因子Lipin-1の発現量の増加が関与している可能性が示唆された。
すべて 2008
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Biochemical Biophysical Research Communications 374
ページ: 587-591