研究概要 |
本研究の目的は,小流域の長期的な風化速度・侵食速度を定量し,風化-侵食システムと水文地形プロセスの関連を議論することである.主な結果は以下の3点である:(1)足尾山地の小流域を対象にTCN法を適用して得られた過去1万年程度の削剥速度を最近10年間の現地観測結果と比較して,約100年サイクルで生じる土石流イベントがこの地域の地形変化において重要であることを指摘した.(2)北アルプス芦間川の花崗岩流域を対象にTCN法と地球化学物質収支法を適用し,長期の化学的風化速度を定量した結果,削剥速度の大きな領域(>500mm/kyr)において,物理的侵食が化学的風化に対して卓越することが明らかとなった.(3)阿武隈高地の花崗岩流域を対象に地球化学物質収支法を適用し,長期的な削剥速度に対して化学的風化速度が占める割合を求めたところ,その値は74%と高い値を示した.これは短期的な観測に基づく既存の報告(17%)よりも大きく,この地域の削剥に対して化学的風化が重要な役割を果たしていることが明らかとなった.
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