研究課題
若手研究(B)
今年度は本研究の目的として掲げた内容のうち、次の2点に取り組んだ。1、従来の定住型博物館に対し、博物館に収蔵されている学術標本を社会のさまざまな場所に展開・流動させる、次世代型ミュージアム「モバイルミュージアム」プロジェクトによる異化効果(社会的インパクト)の本格的検証として、観覧者に対するインタビュー調査を実施した。具体的な内容としては、東京大学総合研究博物館が赤坂インターシティのエントランスロビーにて実施している「モバイルミュージアム」の第3期および第4期展示替え後の2回にわたり、学生延べ9名の協力を得て、第3期は81サンプル、第4期は194サンプルの回答を得た。このインタビュー調査により、プロジェクトが観覧者に与える影響について、自由回答によるテキスト・データを収集することができた。2、調査結果の分析により、マーケティング的視座による展示物に対するオーディエンスの選好や価値構造の探索を行った。とくに、テキスト・データから品詞ごとの頻出語を抽出した分析では、新しい展示物のうち人々が言及する回数が多いものや展示替え後も記憶に残る展示物が明らかになった。また、初年度の重点的な取り組みとして、博物館における評価の意義と課題、マーケティング関連の分析手法に関する文献調査を行った。これにより、第4期では、インタビュー調査の内容を微修正し、回答者属性やプロジェクトの認知度に関するより詳細なデータ収集を行うことができた。