研究成果は(1)内藤家文書構造の把握と(2)転封過程の解明の二側面において得られた。 (1)については、内藤家文書を対象に、江戸時代の段階での記録の管理帳簿であるところの現用時目録を調査・抽出、撮影し、この中から、特に転封時の記録管理の状況を知りうる「御用部屋置付白木大箪笥引出目録」のデータベース化を行った。この作業によって、特に文書管理における江戸の重要性を把握する事が出来た。また、内藤家文書を対象に転封時に発生する文書を調査し、概要を展示会2009年度明治大学博物館特別展『大名と領地』で示し、その内容を図録として刊行した。 (2)については、転封時における内藤藩の旧領地、新領地、江戸、大坂という四地点での動きを記録した「奥州磐城平日州延岡御所替覚帳」をデータベース化し、雑誌に発表した。さらに、従来の転封研究では注目されていなかった藩の日記史料に注目する事によって、内藤家の磐城平から延岡への移動の実現過程を解明し、雑誌に論文「転封実現過程に関する基礎的考察」として発表した。そこでは、江戸藩邸が情報の収集発信のセンターになっている事、転封業務の命令系統が江戸藩邸を中心に形作られている事など、文書作成の前提となる転封時の藩政機構の動きを明らかにし、転封によって大名家に生じる経済的な負担や家中に与える影響、他大名家とのやり取りの重要性などについても指摘した。
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