配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2010年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2009年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2008年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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研究概要 |
本研究においては,知的財産法における独占権の相対化について理論的検討を行った。そこでは,知的財産法が関係するいくつかの産業領域を選定し,関係当事者のあり方や市場構造などを特定した。それを踏まえ,知的財産法における独占権が,いかなる領域のいかなる関係者に対して機能しているのか/機能していないのか,ということを明らかにすることを目指した。 折しも,本研究を進める過程において,いわゆるGoogle Books 問題が世界的にクローズアップされた。ここでGoogleが目指した方向性は,従来の知的財産法のデフォルトルールである"Opt-in"型,すなわち知的財産権を利用したい当事者が,事前に権利者の許諾を得るというメカニズムから,"Opt-out"型,すなわち当該知的財産権の利用を拒みたいと考える利用者の側が積極的なアクションを起こさなければならないというメカニズムへの移行であり,本研究がターゲットにする独占権モデルに大きな風穴を開ける可能性を秘めたものであったため,この重要問題に関する検討を重点的に行うこととした。 検討の結果明らかになったのは,文化芸術活動の関係者の経済的基盤を安定化させるという目標を設定した場合,国家がとりうる「文化政策のポートフォリオ」の中で,著作権法は唯一絶対の手段ではないという事実である。国家による文化芸術助成や,民間でのフィランソロピーなどとの相関関係の中で,望ましい政策目標を達成するべく,様々な政策達成手段をいかに組み合わせるのかということを考慮し,制度設計がなされるべきである。 知的財産法が関係する領域及び関係当事者のあり方に鑑み,知的財産法における独占権を,いかなる領域において,いかなる強さに設定すべきなのかという点については,知的財産法だけを眺めていたのでは答えは出ない。今後,知的財産法を文化政策全体に位置づけつつ研究を進めることがより一層重要であるということが明確になったといえよう。
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