電子ネットワーク上でのデジタル化個人情報の漏洩に関連する法的紛争を民事司法手続により解決する場合、デジタル情報の伝播と司法手続のスピード間の圧倒的な格差という本質的限界が存在する。故に被害者は紛争解決制度の利用中にもデジタル化情報の拡散による2次被害発生のリスクを抱え、提示されたソリューションの価値自体が大きく損なわれる場合すらある。以上の問題意識から本研究ではデジタル情報の即時伝播性に即した新たな紛争解決制度基盤の構築のための基礎を築くことを目的とした。 21年度は、(1)事業者保管データへの自律型電子的自力救済実行モデルの詳細設計、(2)テキストデータへの自律型電子的自力救済プログラム搭載の是非、(3)個人データ流出以外への制度適用の可能性についての検討、(4)その他を中心に、制度的側面と工学技術の最新動向を文献収集、関連各学会・研究会参加により引き続きキャッチアップすることにつとめた。 特に上記4点に共通する問題として、新たに分散型情報処理社会における企業倒産処理手続と個人情報保護制度の関係についても研究対象とし、米国と日本について、制度の現状と課題について検討した。この点については、情報処理学会電子化知的財産・社会基盤研究会48回研究会等の場で報告を行っている。また、本研究全体のコンセプトについて、英訳を行い、投稿に向けて準備を進めている。
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