研究概要 |
CREとは,Corporate Real Estateの頭文字を意味し,企業が利用する不動産を意味する。それは,所有や賃貸借の形態は問われず,本業の用に供されていても,投資目的であってもかまわない。日本でCREという言葉が市民権を得るようになったのは,2000年代中期であるが,それ以前からも,日本において,不動産,特に土地は,企業活動において欠かすことができない経営資源であった。欧米の企業経営では,不動産はヒト,モノ,カネ,情報に匹敵する第5の経営資源として認識されているものの,CREを重視した経営活動の必要性が唱えられるようになってから四半世紀しか経過していない。日本でも欧米からCREマネジメントやCRE戦略の概念が輸入され,産学で,その役割の重要性が唱えられている。ただし,欧米の研究蓄積を参考にしながらも,日本独自の方向性に進んでいるように思える。本研究では,日本のCREマネジメントの特徴,ならびに問題点を明らかにすることを目的としている。日本におけるCREマネジメント手法として,コスト削減,ワークプレース戦略,ポートフォリオの最適化があげられるが,これらの手法は互いに独立している。くわえて,CREマネジメントを適切に行うための組織構造として,専門部署の設置,ICTの導入,専門家の育成の必要性が唱えられているが,逆に,この点が多くの経営者に誤解を招き,過度な負担から,企業にCREマネジメントを行うことを断念させる傾向にある。このような背景から,日本ではCREマネジメントが普及していないのが現状である。CREマネジメントの手法や形態は多様であるにもかかわらず,日本ではいくつかの方法をあらゆる事例に当てはめようとする傾向がある。今後は,企業がそれぞれの組織や事業に適したCREマネジメントを独自に構築することが求められ,そのためにはCREマネジメントにおける合理的な理論モデルの構築が必要となる。
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