研究概要 |
間欠性ゆらぎの解析法を開発し,非線形非平衡系にみられる現象を解析した。発達乱流などの非線形非平衡系で観測される間欠性ゆらぎの非ガウス確率密度関数は,分散の異なるガウス分布の重ね合わせで記述できる場合がある。我々はこの点に注目し,非ガウス過程を確率変数の積として分解する方法を開発した。ここでは,観測された確率過程が局所的なガウス過程と,分散の非一様性を表わす対数振幅のゆらぎで相乗的に記述されることを仮定した。この仮定の枠組みに基づけば,観測時系列の対数絶対値モーメントの推定を通じ,対数振幅の統計的性質を明らかにできることを示した。この方法では,べき的な裾をもつ分布で分散が有限でない非ガウス分布についても,対数振幅の統計量は有限になるため,非常に幅広い確率過程に適用可能になる。理論的・数値的例として,ランダムカスケードモデルやsuperstatisticsの性質を議論した。粗視化スケールの増加にともなうガウス分布への遅い漸近に注目し,その速さを数値的,理論的に見積もった。また,応用例として,心拍変動の解析を行った。 さらに,複雑系で観測される,非対称間欠性を特徴づけるために,中央値を中心とした正側,負側の非ガウス統計量を提案した。そのような非対称過程の数値例として,カスケード過程を拡張した確率過程を構築し,このモデルの理論的性質が,我々の提案した推定法で求められることを数値実験で確認した。この方法を心拍変動解析に応用し,心拍変動に見られる非対称性が加齢や自律神経系異常に依存して変化することを見出した。
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