研究概要 |
【研究目的】 中性原子Bose-Einstein凝縮(以下BECと略記)において、高次の量子渦がある場合や、光学格子ポテンシャル中を流れる場合、そして多成分BECの場合などに、ゆらぎの従う固有値方程式であるBogoliubov-de Gennes方程式に複素固有値が出現することが知られている。本研究課題では、この複素固有値で特徴付けられる動的不安定性を場の量子論の枠組みで記述することを目指した。具体的には、BECにおける高次量子渦の崩壊現象の解析を行い、この動的不安定な系における物理的状態空間を解明することを目標とした。 【研究方法】 まず、BEC高次量子渦系については、不安定モードを励起するような外部摂動が加えられた時の密度線形応答を数値的に求めた。また、状態表現の吟味については、複素モードの励起の度合いに関する自由度が存在することがわかっているので、対応する数値計算をし、どのようなパラメータで物理的に妥当な結果が得られるかを調べた。ここで、物理的な妥当性については、密度期待値が正値をとり、さらに渦崩壊の兆候が見える、という指針を置いた。 【研究結果】 まず、高次量子渦の崩壊現象の記述においては、外部摂動の結果、渦が崩壊する兆候が見られた。数値計算において、この崩壊は数十マイクロ秒で起こるが、この時間間隔は対応する実験(Shin et al., Phys. Rev. Lett. 93, 160406(2004))における渦の寿命と同程度であった。 次に、状態空間の吟味については、複素モードの励起の度合いに関する自由度のうち、励起のない状況に対応する状態における結果が、対応する実験に最も近い振る舞いをした。また、温度に関する自由度も考慮した。その結果、温度が高いほど、渦の崩壊が早まる傾向が見られた。
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