研究課題
若手研究(B)
平成21年度においては、交付申請書に記載した計画通りの研究を行い、私がこの課題研究を通じて構築した拡張モード結合理論を用いて、ガラス形成物質における丘fragile-to-strong dynamic crossover(粘性率や拡散係数の温度依存性が、ある温度を境に非アレニウス的な振る舞いからアレニウス的な振る舞いへと変化すること)の研究を行った。これまで、fragile-to-strong dynamic crossoverの実験的研究が主に水を対象に行われてきたことから、このようなcrossoverが起きるのは水素結合ネットワークに起因する水の特殊性によるものだと考えられてきた。ところが最近の研究により、このcrossoverが水素結合を持たないガラス形成物質においても見られることが明らかになっており、従来の解釈は不十分なのではないかと考えられるようになっている。私は平成21年度の研究を通じて、過冷却液体のダイナミクスがある温度を境にactivated hopping processと呼ばれる活性化型のプロセスに支配されることによりfragile-to-strongdynamic crossoverが起こり得ることを理論的に示した。この理論においては水素結合ネットワークの存在を前提としていないので、この理論は一般的なガラス形成物質におけるfragile-to-strong dynamic crossoverの説明に用いることができる可能性を秘めている。また、fragile sideとstrong sideにおいて、ストークスーアインシュタイン則の破れ方が異なっていることも理論的に示したが、これは水に対する実験結果とコンシステントであり、この理論の有効性を示している。これらの結果については、Journal of Physics : Condensed Matter誌(2報)において発表した。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件)
Journal of Physics : Condensed Matter 21
Physical Review E 79
Physical Review Letters 102
Physical Review E 78