| 研究概要 |
プリオンタンパク質(PrP)は窒素末端領域に複数の金属イオン結合部位を持つ.オクタペプチド領域PrP(60-91)には最大四個の銅イオンが配位する.His96とHis111残基近傍にも銅イオンが配位することがNMRやESR分光で観測されている.プリオンタンパク質に結合した銅イオンはプリオン病機序に関与すると考えられていたが,詳細は明らかではなかった.本研究では,プリオンタンパク質・銅イオン複合体を主な対象として,金属結合部位の構造と性質について,量子化学計算を用いた解析に取り組んだ.その結果,オクタペプチド領域に結合したCu(II)イオンは高いCu(II)/Cu(I)還元電位を持ち,His96やHis111残基近傍に結合した銅イオンは,逆に,高いCu(II)/Cu(III)酸化電位を持つことが分かった.このように,プリオンタンパク質は金属イオンの配位構造に依って著しく異なる酸化還元的特性を持つことが本研究の結果から明らかとなった.
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