研究概要 |
DNA修復機構は恒常的に生じるDNA損傷を修復し,ゲノムの安定性を維持している.しかしDNA複製中に生じた損傷に対する積極的な修復機構は知られていない.複製中に生じた損傷は複製型DNAポリメラーゼによるDNA複製を阻害するため,細胞は危機的な状況になる.損傷による複製停止を回避するための一つの戦略が損傷乗り越えDNA合成(TLS)である.TLSは,誤りがちなDNAポリメラーゼ(TLSポリメラーゼ)による損傷塩基を鋳型としたDNA合成であり,複製型ポリメラーゼに代わって,TLSポリメラーゼが一時的にDNA合成を行う.その後,再び複製型ポリメラーゼがDNA合成を再開し,DNA複製が完了する.本研究対象であるREV7は真核生物で保存されたタンパク質で,TLSポリメラーゼであるREV1およびREV3と相互作用することが報告されている.また,遺伝学的な研究によって,REV1,REV3,REV7が協同的に働くことが報告されているが,REV7の詳細な細胞機能や,3つのREVタンパク質がどのように損傷部位で協同的にTLSを行うかは明らかになっていなかった.本研究では,REV7の細胞機能,REVタンパク質によるTLSの作用機序を構造生物学的に明らかにするために,ヒトREV7とREV3フラグメント(1847-1898)との複合体のX線結晶構造解析を行った.さらに,複合体の立体構造に基づいたREVタンパク質の相互作用解析,動物細胞を用いたREV7の機能解析を行った.その結果,REV1, REV3, REV7は三者複合体を形成し,REV7が2つのTLSポリメラーゼ(REV1とREV3)を構造機能的に繋ぐアダプター分子として機能することを明らかにした.
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