研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、緑藻クラミドモナスを材料として、i)鞭毛内で機能しているダイニン活性を調節するレドックス(酸化還元)シグナリング経路を分子レベルで明らかにすることii)鞭毛内の酸化還元状態がどのような条件で変化し、そのときi)の経路がどのように働くかを明らかにすることであった。第一の目的については、具体的にはダイニンサブユニットのうちLC3,LC5,DC3という3つのレドックス感受性タンパク質の基質を明らかにすることであった。これらの基質タンパク質を少量精製する方法を開発することに成功したが、期間内に同定に足る量の精製には至らなかった。しかし、今後も研究を続けることで同定に至るものと確信している。第二の目的については、レドックス感受性GFPを導入したクラミドモナス株を作製することで、鞭毛内レドックス状態を直接モニターできる系を開発した。現在鞭毛内酸化還元電位をリアルタイムで計測する実験が進行している。今後、レドックス依存的な運動変化を行う鞭毛の、変化の閾値などの詳細が明らかにする。研究期間中の副産物的な成果として、2つの発見があった。1つ目に、撹拌された培養液中の細胞の鞭毛打頻度がカルシウム依存的に上昇するという新奇の現象を見出した。その後の詳しい研究により、ずり応力によって機械刺激チャネルと電位依存性カルシウムチャネルが連動し、鞭毛内カルシウム濃度が上昇することで外腕ダイニン活性が上昇することがわかった。この成果を論文にまとめ、CellMotility and the Cytoskeleton誌に受理された。2つ目に、膜透過性酸化・還元薬剤処理細胞の行動観察により、クラミドモナスの走光性の符号(正か負か)がレドックスで調節されていることを発見した。細胞が光に向かうか逃げるかを決める切り替え機構は長い間謎であったが、本研究により初めてそれが、光合成活性などで変化する細胞内レドックス状態で調節されていることが見出された。この知見については現在論文を投稿中である。
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Methods in Cell Biology 92
ページ: 153-161
Biochim Biophys Acta-General Subjects 1790
ページ: 1681-1688
Cell Motility and the Cytoskeleton 66
ページ: 736-742
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http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seiri/lab.html