研究概要 |
さつま地鶏は鹿児島県で飼養されている国産銘柄種であり、天然記念物である薩摩鶏にロードアイランドレッドを交雑して造成された集団である。本研究では、ニワトリSNPを用いた費用効率が高くかつハイスループットな解析システムの確立とさつま地鶏の品種鑑定を目的とし、以下の研究を行った。研究1)安価で迅速なゲノムDNA抽出法の確立を目的として,植物で確立されたガラス繊維ろ紙を適用し、条件検討を行った。研究2)わが国でヒトゲノム解析用に開発され、96種類のSNPsによる遺伝子型を同時に判別できるDigiTag2法をニワトリSNP解析に応用し、ニワトリSNP検出システムの開発を行い、実際に薩摩鶏とロードアイランドレッドを含む5鶏集団89羽に利用した。 研究1)ニワトリ血球の希釈倍率50倍~200倍で1μg程度のゲノムDNAが得られ,LA-PCRによって約5kbの産物も確認できた.2.サンプル吸着後の保存は,室温で4週間までDNA抽出が可能であることを確認した.本法は,1サンプル当たりの費用が10円程度で,コスト面で優れ,16個体の血球からおよそ1時間でゲノムDNAが抽出できた. 研究2)DigiTag2解析の結果、1)供試した全89羽の個体識別ができた。2)総合同値確率は8.00×10^<-20>と計算され、10^<19>羽程度のニワトリの識別が可能であることが示唆された。全世界のニワトリの飼養羽数が1.84×10^<10>羽(FAO,2009)であることから、現在の解析で十分な識別能を有することが示唆された。3)NJ系統樹は5集団がそれぞれ独立したクラスターを構成し、分類することが出来た。以上、SNPを用いた品種識別技術への応用の可能性が示唆された。
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