研究課題
若手研究(B)
リンパ腫は犬で最も多く認められる造血器腫瘍であり、人と同様に根治が困難な疾患である。治療の第一選択は化学療法であり、この20年間多剤併用療法による治療成績の向上が検討されているが、腫瘍細胞が多剤耐性を獲得することなどから、1年程度の生存期間しか得られず大きな問題となっている。したがって化学療法以外の新規治療法の開発は急務である考えられる。そこで本研究では、将来的な臨床応用が期待できる新規治療法の確立を目的として、免疫療法の可能性に着目し、腫瘍特異的抗原を発現させ、かつ腫瘍特異的免疫活性を誘導するDNAワクチンの作出を試みるとともに、ワクチン接種による生体での免疫応答および副作用の発現に関する基礎的検討を行うこととした。本研究ではまず、DNAワクチンプラスミドの構築を試みた。イヌB細胞由来リンパ腫細胞株(GL-1)、イヌT細胞由来リンパ腫細胞株(CL-1)および鹿児島大学農学部附属動物病院に来院し、低悪性度リンパ腫と診断された犬2例からゲノムを抽出し、腫瘍細胞が有するIg遺伝子の可変領域、あるいはTCR遺伝子の可変領域の遺伝子をPCR法により単離し、その塩基配列を決定した。得られた遺伝子を蛋白発現用プラスミドに組み込み、アフリカミドリザル腎臓由来細胞(Cos-7)にtransfectし蛋白発現を試みた。細胞を一定時間培養後、抗マウスおよび抗イヌ免疫グロブリン抗体、あるいは抗マウスおよび抗イヌT細胞受容体抗体を用いた間接蛍光抗体法、ならびにウェスタンブロット法により確認した。同時に、治療効果判定のために末梢血中の微小残存病変(MRD)をリアルタイムPCR法により測定する系を確立した。さらに臨床例におけるMRD測定を試み、治療とともにMRDは減少することや、治療終了時のMRDレベルが再発までの期間と相関することを明らかとした。
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